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光のハンモック

  • Day:2012.06.28 07:41
光のハンモック

Tense+Relax
Emi Murakami
2001

Photo : Satoshi Asakawa


『ひかりの国のタッシンダ』という物語がある。
子供の頃に読んで、印象に残っていた。

タッシンダはよその国から大きな鳥に運ばれてきた女の子。
髪や目の色がみんなと違っていて、陰口を言う人もいたが、
織物の名手として、一目置かれていた。
そんな平和な国に、ある日怪物が攻め込んできた。
暗闇でしか生きられないモンスターを特別な網で
捕らえて朝の光でやっつけるという作戦。
王子様と協力して見事退治し、二人は結ばれる。

よくあるお姫様物語なのだが、挿絵や描写がきめ細やかで、
特にある部分が記憶に残っていた。

怪物を退治する為に、チムブリルという虫がはきだす細い糸で
網を作るというくだりだ。

「その糸は鋼鉄のロープよりつよく、
しかも、ほとんど目に見えないくらいほそいのです。
一万メートルの糸で、やっと紅茶茶碗一ぱいの量しかありません。」

細くてふわふわと木の葉や小枝にからみついた。
そんな糸を不眠不休でタッシンダが編む様子を、
手に汗をにぎって読んだ記憶がある。

透明な糸と思い込んでいたが、読み返してみると、そんなことは書かれていない。
暗闇の中で手探りで編む様子が透明だと思わせたのか。
ちょうどレース編みに興味を持った頃でもある。
レース糸でも大変なのに、そんな細い細い糸を編むなんて...

この時なのかもしれない。
扱いにくい素材を自由に繰れるようになりたいという感情が
芽生えたのは。正攻法のやり方じゃない方法を探る癖。

ガラスで柔らかい作品を作ってみたい。
試行錯誤して、ガラスを織物のように織った。

実をいうと、硬質な文章が子供の頃は余り気に入らなかったのだが、
そのイメージを長く心にとどめることができたのは、
透明感のある詳細な描写のおかげだろう。

作品のタイトル「Tense+Relax」は緊張とリラックスの意味。


『ひかりの国のタッシンダ』エリザベス=エンライト


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