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土マンゴーの香り

  • Day:2012.03.27 07:39

所々水たまりができた地面からすえた匂いがしている。

大人の胸の辺りに目線があったから、視界の半分近くは地面だった。
初めて台湾の市場に連れていってもらった時、何よりその匂いに飲み込まれた。

ガラスのショーケースなんか無かった。
肉屋にはグロテスクな肉のかたまりが直接、金属のフックに掛けられていた。
ぼんやりとした表情が残った豚の頭が台に無造作に載せられている。
子供にはショッキングな光景。

にぎやかな鶏の声がして、金茶色の羽が舞う。
客が選んだ鶏は頭がなくなったあと羽むしり器に入れられて
あっという間に情けない姿になる。
蒸気と獣の匂い、群がる蠅は油膜みたいにぎらぎら光っている。
カエルのフライが渦高く皿に盛られた風景はグロテスクだけれどちょっと可愛い。
蛇専門店もある。

映画「ブレードランナー」の世界、そのものだ。


果物の匂いも最初は慣れなかった。
木果は「もっか」と読む。パパイアのことである。
黒っぽい小さなぶよぶよとした種はある種の虫を思わせたし
排泄物に似た匂いも少し苦手だった。
慣れるにしたがって香りの強い果物ほど好きになっていったけれど。

割とすぐになじめたのがマンゴーだった。
中でも青い扁平な形をした土マンゴーは香りが強く大好きだった。
子供の手のひらにちょこんとのる手頃なサイズ。
大きな樹に沢山実った。
市場で袋に一杯買ってきてもらったものを
冷蔵庫でよく冷やして食べる。


土マンゴーの香り


冷たい石の床に腿を押し付けるようにぺったりと座って食べる。
扁平な種が大きくて実が少ないので、歯でこそげ落とし落とすように。
手がポトポトと果汁で卵色に染まり、舌が次第にしびれてくる。

当時、珍しかったのはリンゴマンゴーという種類で
日本のスーパーでもよく見る赤っぽい大きな実だ。
甘みと酸味のバランスがいいし果肉も分厚くて食べがいがある。
簡単に生る土マンゴーより育てるのに手間がかかるそうで高級品だ。

家にはなかったが、育てているお宅があった。
季節になるとマンゴー泥棒に眼を光らせる。
美味しく育ったところを持っていかれてなるものか。

そんな輩がきたら息子が
「サーッ(殺)!!」よ
と近所の人が大きく刀を振りかざす持ったポーズをしてくれた。
庭に飛び出してカンフー映画さながらのアクションをするのだという。
大きな中国の刀である。切れ味が悪そうな感じがより怖い。


果物は濃密な時間のかたまりなのだ。
マンゴー泥棒の罪はサーッに値する。


Comment

おはようございます

今日の物語もよかった、写真もすっごくいい。
アジアのエキゾチックな色だね

GWについにバリに行くことになって、
(私はあの土地のスピリチュアルな濃さには
腰がずっと引けていたのだけど。。)

果物の楽しみがあったと思いつきました

色や形を楽しんできます

そう、

>果物は濃密な時間のかたまりなのだ

この言葉をを胸に刻んで。

素敵なお話をありがとう
  • 2012/03/27 10:12
  • ほんだみえ
  • URL
Re: タイトルなし
ほんだみえさん

バリは行ったことがありますが
外国人が行く所は洗練されていて、さっぱりしていますよ。
きっと気に入ると思います。

でも、アジアの濃さというのは
自分たちと全く無縁ではない懐かしい濃さなんですよね。

バリは沢山のカミサマがいるし
(だから腰がひけちゃうんだっけ ^^;)
まあ、でもそれを祀る鮮やかな花や果物たちがかもしだす独特の
雰囲気を楽しんで来てください。




  • 2012/03/27 13:03
  • むらかみえみ
  • URL
う~~ん いけてる!  

お話も写真もいけてる!

本屋さんでみかけそうなくらい、いけてる!



日本以外のアジアの国に行ったことないけれど、
ほんの一コマ、疑似体験できたかも。
マンゴー美味しいよね。
家の近所のスーパーだとアップルマンゴーとペリカンマンゴーだけ。
土マンゴーって食べてみたいな。
  • 2012/03/27 13:50
  • ころちゃん
  • URL
Re: タイトルなし
ころちゃんさん

> う~~ん いけてる!  
>
> お話も写真もいけてる!
>
> 本屋さんでみかけそうなくらい、いけてる!

ありがとう!!
色々思い出しながら、書きました。
時間が経つと、記憶って枝葉が朽ちていき
残したいものが浮かび上がってくるのね。

またそれを思い出しながら
マンゴーを食べるのもオツですね。



  • 2012/03/28 11:49
  • むらかみえみ
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