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ボストンの魔法使い

  • Day:2012.06.13 07:33
ボストンの魔法使い2

日暮れ時の風景が似合う部屋。

散らかっているようで
窓、ガラス、ランプ、木枠が、ちゃんと自分の場所にいる。

部屋の持ち主はマンカおばさん。
ハンガリー系のアメリカ人で、
ご主人をなくしたのかもしれない、一人暮らしだった。
ボランティア活動をしながら下宿屋を営むことで、生活していた様子。

この不思議な家に一週間ぐらい滞在したことがある。



ボストンの魔法使い

大柄な彼女はどこか魔法使いのようだった。
不思議な帽子を沢山持っていたし、
空を飛べそうな箒も、ほら。

夕御飯を終えて散歩に誘われた。
この日は箒ではなく、歩くことにしたようだった。

ボストンのごく普通の住宅街。
カーテンから漏れるオレンジがかった暖かい光は、
そこが幸せに満ちた部屋ということを静かに語っていた。
少なくとも、そういう顔をしたがっていた。

それぞれが窓やカーテンに工夫をこらしていた。
窓辺に電気スタンドを飾る家も多かった。

「夜の灯りが漏れる家の風景が大好きなの。素敵だと思わない?」

ガラガラとした低い声の中の透明なものが、
夜のひんやりとした空気の中で伝わってきた。

"Beautiful"
"Look at that!"

きれいだね。
ねえ見て見て!

小声でなんども言い合いながら、
よそのお宅の窓を遠慮がちに指差して、家路についた。

マンカおばさんの魔法使いのような鉤鼻と横顔が
夜のほんのりとした光の中でちらつく。


遠い日の大切な思い出。

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